効かないなあ。別の薬に変えてみよう。
そう思って、2本目を出しました。
あとで箱の裏を読んだら、1本目と同じ菌が入っていました。
この記事は、そのてん末と、そこから学んだことです。虫の写真が出てきます。苦手な方は気をつけてください。
毛虫は次の日、イモムシは元気なまま

8月7日、オクラの葉に毛虫がいました。家にあった『ベニカナチュラルスプレー』を、これでもか!というぐらい直接吹き付けました。
次の日、毛虫は葉にくっついたまま、下にビロンと伸びていました。棒でつつくと、ポトンと落ちました。

同じ頃、ガウラにも黒いイモムシがいました。お尻の先にツノのような突起があります。あとで調べたら、スズメガの仲間の幼虫に似ていました。かなり大きい虫です。

こちらにも、同じ『ベニカナチュラルスプレー』を直にかけました。
でも、イモムシは元気なままでした。
8月8日。それなら別の薬をと思って、『ゼンターリ』を出しました。展着剤(てんちゃくざい=薬を葉や虫にくっつきやすくするもの)の『フーモン』と混ぜて、噴霧器でかけました。

次の日。イモムシは変な姿勢をしていましたが、まだ生きていました。
そして8月11日、見に行ったら、いなくなっていました。

効いたのか、どこかへ行ったのか。分かりません。
別の薬だと思っていたら、同じ菌だった

わたしは、こう考えていました。
ベニカナチュラルスプレーで効かないなら、別の薬を使えばいい。
でも、箱の裏の成分表示を並べて読んで、固まりました。

どちらにも、バチルス・チューリンゲンシス菌という同じ菌が入っていました。B.t.菌、BT菌とも呼ばれます。
しかも、入っている割合まで同じでした。どちらも10.0パーセント。
『ゼンターリ』は、この菌だけでできた薬です。『ベニカナチュラルスプレー』は、この菌に植物油と水あめを混ぜたものです。
つまりわたしは、別の薬に変えたつもりで、同じ系統の薬を2回かけていたことになります。

ゼンターリの希釈液、作る前に知りたかった。もったいない…
BT剤は、食べさせる薬

ここで、BT剤の効き方を整理しておきます。
薬には、効き方のタイプがあります。
- 食べて効くもの……薬がついた葉を虫が食べて効く
- かかって効くもの……虫の体に薬がかかって効く
- 息をふさぐもの……虫の呼吸口を油などでふさいで効く
- 植物が吸うもの……根や葉から吸わせて、株全体を薬入りにする
同じ「虫の薬」でも、効き方はこれだけ違います。
BT剤は、いちばん上のタイプです。
かけただけでは効かない
BT剤は、虫が食べてはじめて効きます。
薬がついた葉を虫が食べる。そこからようやく働きはじめます。体に直接かけても、それだけでは効きません。
食べるのは、口に入ってから2〜3時間で止まるとされています。でも動かなくなるまでは、1〜3日かかります。
かけた次の日に元気に見えても、失敗とは限らないわけです。逆に、かけてすぐ死ぬことを期待する薬でもありません。

かけて終わりじゃないんだ。葉ごと食べてもらって、はじめて仕事が始まるんだよ。
大きい幼虫には効きにくい
『ゼンターリ』のラベルには、こう書かれていました。
本剤は若令幼虫に有効ですので、若令幼虫期に時期を失しないように散布してください
STゼンターリ顆粒水和剤 適用表より
若令幼虫(じゃくれいようちゅう)は、生まれて間もない小さい幼虫のことです。
ガウラのイモムシは、かなり大きく育っていました。効きにくい相手だったということになります。
なお、混ぜて使った『フーモン』は、薬を葉にくっつける展着剤としての働きに加えて、虫の呼吸口をふさぐ働きもあります。ただしそちらはハダニ・コナジラミ・アブラムシ向けです。イモムシに対しては、薬を葉にくっつける役目をしていたと考えるのが自然です。混ぜて使うこと自体は、メーカーが案内している使い方なので問題ありません。
2つを比較してみる

同じ菌でも、使い勝手はまるで違います。

2026年8月時点の価格です。2袋目からは道具が手元にあるので、1リットルあたり約65円になります。

『ベニカナチュラルスプレー』は、引き金を引くだけです。

『ゼンターリ』は20gで20リットル分の薬ができます。粉なので軽くて、置き場所も取りません。計量スプーンも付いています。


ただし、使うたびに水を汲んで、粉を量って、展着剤を垂らして、噴霧器に入れる。この4工程が毎回あります。
はじめに要るものも違います。『ベニカナチュラルスプレー』はこれ1本。『ゼンターリ』は薬のほかに、展着剤・噴霧器・スポイトが要ります。
2.3リットルを使うあたりで、値段は逆転します。ベニカナチュラルスプレーの1000mLボトルで、2本と少しです。
鉢が数個で、虫を見つけたときにすぐ使いたいなら、ベニカナチュラルスプレー。株数が多くて何度も使うなら、ゼンターリ。そういう分かれ道だと思います。
使う前に、これだけ確かめる


効き方は分かっていても、適用で引っかかるんですよね。
いちばん痛い勘違いは、最後に見つかりました。
適用表(てきようひょう=その薬をどの植物のどの虫に使えるか、メーカーが載せている一覧)には、2つの欄があります。作物名と、適用病害虫名です。
今回使った3通りを、並べてみます。

オクラに使った『ベニカナチュラルスプレー』は、作物名の欄に「野菜類」があるので、そこは合っていました。ガウラに使ったときも、「花き類・観葉植物」があるので合っていました。
外れていたのは、どちらも適用病害虫名のほうです。毛虫も、ハマキムシも、ガウラのイモムシも、載っていませんでした。
そして、別の薬に変えたつもりの『ゼンターリ』。こちらは、花の欄にあるのがきく・カーネーション・ストックの3つだけ。ガウラの行そのものがありませんでした。
効かないから別の薬に変えたのに、変えた先はもっと手前で外れていた。効くか効かないか以前に、確かめられていない相手だったということでした。
ここは、はっきり書いておきます。
食べるものと、家畜のえさになるものには、適用表の作物名に載っていない植物に、その薬を使ってはいけません。法律で決まっています。
ガウラは観賞用なので、この決まりの対象ではありませんでした。でも、それは「使っていい」という意味ではありません。
適用表に載っていないということは、メーカーが試していないということです。効くかどうかも、ガウラ自身が傷まないかも、分からないまま使っていました。
ガウラは、そのあとも無事でした。水が足りなくて枯れた部分と、切り戻しに失敗した部分はありますが、薬をかけたところが傷んだ様子はありません。花もチラチラ咲いています。

わからないものをただかけるのは、もったいないですから。
法律に触れないから、というだけの話ではありませんでした。
薬代も、混ぜる手間も、かけて回る時間もかかっています。それを、効くかどうか分からない相手に使っていました。
食べるものでも、観賞用でも、やることは同じです。買う前に、適用表で、植物の名前と虫の名前の両方を見る。
まとめ

- 『ゼンターリ』と『ベニカナチュラルスプレー』は、どちらもBT菌が入った同じ系統の薬。割合まで同じ
- 別の薬に変えたつもりでも、同じ効き方の薬をかけていることがある
- 薬には効き方のタイプがある。BT剤は、食べさせるタイプ
- かけただけでは効かない。動かなくなるまで1〜3日かかる
- 若い小さな幼虫に有効。大きく育った幼虫には効きにくい
- 手軽さはベニカナチュラルスプレー、安さはゼンターリ。2.3リットルあたりで逆転する
- 適用表は、作物名と適用病害虫名の2つを見る
- 食べるものには、作物名に載っていない植物に使ってはいけない(法律で決まっている)
- わからないものをただかけるのは、もったいない。だから使う前に確かめる
同じ菌だと知らないまま、2本目を出していました。箱の裏を読んでいれば、その日のうちに分かったことでした。
参考(出典)
- ベニカナチュラルスプレー|KINCHO園芸
- STゼンターリ顆粒水和剤 適用表(PDF)|KINCHO園芸
- フーモン|日本化薬
- BT剤による害虫防除|千葉県
- 農薬の効き方と特徴を知ろう 殺虫剤編①|佐賀県果樹試験場
- 農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令|農林水産省


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